シンガポール雇用パス(Employment Pass、EP)・S Pass の給与要件:2026年の現行基準と2027年の引き上げ
いま支払うべき水準、2027年1月1日から変わる水準、そして残りを決めるCOMPASSの仕組み
先に結論から。現在の雇用パス(EP)は、一般業種で月額 S$5,600(23歳以下)が下限となり、年齢とともに上がって45歳以上では S$10,700、金融業種では S$6,200〜11,800 です。加えて COMPASSで40点が必要になります。2027年1月1日からは新規申請の下限が S$6,000 と S$6,600 に上がり、更新は 2028年1月1日以降に満了するパスから新基準の対象です。S Passも同じ時間軸で引き上げられ、S Passの賦課金(レビー)は全業種一律の 月額S$650 となります。シンガポールを地域統括拠点とする日系企業にとっては、この2つの日付が2027年度の人件費予算の起点になります。
2026年8月12日、MOM(人材省)の資料と照合済みです。
雇用パス(EP)の最低給与は現在いくらですか。
先に結論から。新規申請の下限は、一般業種で23歳以下が月額S$5,600、年齢とともに上がり45歳以上ではS$10,700です。金融業種はS$6,200から始まり、上限はS$11,800となります。給与は入口の条件であって、審査結果そのものではありません。
| 業種 | 下限:最年少層(23歳以下) | 下限:45歳以上 |
|---|---|---|
| 一般業種 | 月額S$5,600 | 月額S$10,700 |
| 金融業種 | 月額S$6,200 | 月額S$11,800 |
この基準は年齢とともに段階的に上がる設計です。2つの基準点の間を連続的に上昇するため、35歳の候補者は下限より明確に高く、上限よりは低い水準に位置します。本ページでは照合済みの下限と上限のみを掲載しています。年齢ごとの一覧表が各所で出回っていますが、MOMがその形で公表しているものではなく、中間値を誤って引用するとオファーを直前で作り直すことになります。具体的な年齢については、オファーを確定する前にMOMの自己診断ツールで確認してください。
貴社が取り違えやすい点が2つあります。1つ目は、下限を超えても資格を満たしたことにはならない点です。申請は COMPASS で40点に達する必要があり、下限ぎりぎりの給与は給与項目で0点になります。2つ目は、EP保持者がCPF(中央積立基金)の対象外である点です。雇用主が拠出することはできないため、EP人材の月次コストは給与にCPFを足したものではなく、給与に技能開発賦課金(SDL)を足したものになります。国民と永住権保持者についてはシンガポールのCPF拠出率で解説しています。
2027年1月1日から何が変わりますか。現行基準と新基準の比較表
先に結論から。2027年1月1日までは変更ありません。同日以降、EPの新規申請は一般業種でS$6,000、金融業種でS$6,600、S Passの新規申請はS$3,600またはS$4,000が必要になります。更新で新基準が適用されるのは、2028年1月1日以降に満了するパスに限られます。
| パスと業種 | 年齢層 | 現行基準 | 2027年1月1日から | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 雇用パス(EP)— 一般業種 | 最年少層(23歳以下) | S$5,600 | S$6,000 | +S$400 |
| 雇用パス(EP)— 一般業種 | 年齢に応じた上限 | S$10,700(45歳以上) | S$11,500(40代半ば) | +S$800 |
| 雇用パス(EP)— 金融業種 | 最年少層(23歳以下) | S$6,200 | S$6,600 | +S$400 |
| 雇用パス(EP)— 金融業種 | 年齢に応じた上限 | S$11,800(45歳以上) | S$12,700(40代半ば) | +S$900 |
| S Pass — 一般業種 | 最年少層 | S$3,300 | S$3,600 | +S$300 |
| S Pass — 一般業種 | 年齢に応じた上限 | S$4,800(45歳以上) | S$5,100(40代半ば) | +S$300 |
| S Pass — 金融業種 | 最年少層 | S$3,800 | S$4,000 | +S$200 |
| S Pass — 金融業種 | 年齢に応じた上限 | S$5,650(45歳以上) | S$5,650(40代半ば) | 変更なし |
| 日付 | 適用範囲 |
|---|---|
| 2027年1月1日 | EPとS Passの新規申請が新基準で審査されます。 |
| 2028年1月1日 | 更新が新基準で審査されます。対象は同日以降に満了するパスです。 |
2行目は特に丁寧に読んでください。ここが静かにコストを押し上げます。更新の判定基準はパスの満了日であって、更新申請を出した日ではありません。2027年11月に満了するパスは現行基準で更新できますが、2028年2月に満了するパスはできません。シンガポールで外国人を雇用しているのであれば、今四半期に取り組む価値が最も高い作業は、保有パスを満了日順に並べ、2028年1月1日で線を引くことです。
現行のS Pass基準は2025年9月1日から適用されています。賦課金が一律化されたのと同じ日です。それ以前にS Passのコストを確認したきりであれば、2つの古い数字を同時に抱えていることになります。
COMPASSは雇用パス申請をどう評価しますか。
先に結論から。COMPASSはEP申請に適用され、40点の合格ラインを6項目で判定します。基礎4項目は各20点・10点・0点、これに加点2項目が上乗せされる構成です。給与の下限を満たすだけでは合格になりません。判断されるのは合計点です。
| 項目 | 区分 | 配点 |
|---|---|---|
| C1 — 給与 | 基礎項目 | 20/10/0 |
| C2 — 学歴 | 基礎項目 | 20/10/0 |
| C3 — 国籍の多様性 | 基礎項目 | 20/10/0 |
| C4 — 現地雇用への貢献 | 基礎項目 | 20/10/0 |
| C5 — スキル加点 | 加点項目 | +20。候補者の国籍が貴社のPMETの3分の1以上を占める場合は+10に半減 |
| C6 — 戦略的経済分野の加点 | 加点項目 | +10 |
項目は4つではなく6つです。COMPASSを4項目の枠組みとして説明する記事がいまも多いのは、加点2項目が初期の解説記事より後に制度へ組み込まれたためです。C5とC6を無視するのは小さな誤差では済みません。不足スキルに該当する候補者や、戦略的経済分野の取り組みに参加している企業であれば、その10点や20点が、30点で却下される申請を40点の承認に変えます。
基礎4項目のうちC3国籍の多様性とC4現地雇用への貢献は、候補者ではなく雇用主を評価します。設立まもない現地法人が従業員3名・単一国籍という状態では、どれほど優秀な人材を採用しても点数が伸びにくいのはこのためで、同じ候補者がある企業では却下され、別の企業では承認される理由もここにあります。2027年1月に給与基準が上がるとC1も連動します。今日の下限に合わせて設計したオファーは、給与額を変えなくても翌年には低い点数になります。
S Passの給与・賦課金・雇用枠はどうなっていますか。
先に結論から。S Passの下限は一般業種で月額S$3,300、金融業種でS$3,800、年齢とともにS$4,800とS$5,650まで上がります。さらに1名につき一律月額S$650の賦課金がかかり、雇用枠も消費します。採用計画を先に止めるのは、多くの場合この雇用枠です。
| S Pass | 現行(2025年9月1日から) | 2027年1月1日から |
|---|---|---|
| 一般業種、最年少層 | S$3,300 | S$3,600 |
| 一般業種、上限 | S$4,800(45歳以上) | S$5,100(40代半ば) |
| 金融業種、最年少層 | S$3,800 | S$4,000 |
| 金融業種、上限 | S$5,650(45歳以上) | S$5,650(変更なし) |
賦課金は一律化され、2段階の表は廃止
2025年9月1日から、S Passの賦課金(レビー)は全業種・全区分で一律の月額S$650です。1か月に満たない期間は1日あたりS$21.37で日割りされます。外国人比率が一定を超えると税率が上がる従来のTier 1/Tier 2の区分は廃止されています。広く引用されている比較サイトの一部は、いまも2段階の表を掲載したままです。手元のコスト試算にS Passの賦課金が2種類出てくる場合、その資料は2025年9月より前のもので、金額が実態と合いません。予算上は1名あたり月額S$650の一本で計上してください。
雇用枠:外国人比率の上限(DRC)とS Passの個別枠
外国人比率の上限(Dependency Ratio Ceiling、DRC)は全従業員に占める外国人の割合を制限し、より厳しい個別枠がS Pass保持者の人数を単独で制限します。いずれも現地従業員数を基準に計算されるため、ここで現地従業員給与基準が効いてきます。
| 業種 | DRC(全体) | S Pass個別枠 |
|---|---|---|
| サービス業 | 35% | 10% |
| 製造業 | 60% | 15% |
| 建設業 | 83.3% | 15% |
| プロセス業 | 83.3% | 15% |
| 造船・船舶修繕業 | 75% | 15% |
サービス業の企業では、実際に制約となるのはほぼ常に全体の35%ではなくS Pass個別枠の10%です。S Pass保持者1名につき、名簿上おおむね9名の現地従業員が必要になる計算です。EP保持者には雇用枠がかからないため、本来はS Passが適する職種をEPで進める企業もありますが、その場合はより高い給与下限とCOMPASSに直面します。
現地従業員給与基準(LQS)とは何で、雇用枠にどう影響しますか。
先に結論から。現地従業員給与基準は2026年7月1日から月額S$1,800です。従来はS$1,600で、パートタイムは時給S$10.50となります。すでに施行済みです。全国一律の最低賃金ではなく、就労パスの雇用枠を計算する際に現地従業員を何名分として数えるかを決める基準です。
| 現地従業員の月額給与 | 雇用枠上の人数 |
|---|---|
| S$1,800以上 | 1名 |
| S$900以上S$1,800未満 | 0.5名 |
影響は法務ではなく算数の問題として表れます。2026年7月1日に基準がS$1,600からS$1,800へ動いた時点で、その間の給与だった現地従業員は1名から0.5名に下がりました。S Pass個別枠の10%をちょうど使い切っているサービス業の企業では、採用も退職もないまま枠が減ります。枠の使用率が逼迫しているなら、次のS Pass申請を出す前に、S$1,800を基準として現地従業員数を数え直してください。却下されてから数え直すのでは遅すぎます。
これは雇用枠の計算ルールであって、給与からの控除項目ではありません。EPやS Passの外国人はCPF(中央積立基金)の対象外であるため、枠を維持するために現地従業員の給与を引き上げると、現地側にはCPFのコストが生じ、外国人側には生じません。現行の雇用主・従業員それぞれの拠出率はCPF拠出率のページで確認できます。
2027年1月1日に向けて、いま何を準備すべきですか。
先に結論から。保有パスを満了日で一覧化し、現行の下限に近いオファーを見直し、もともと予定していた申請は2027年1月1日より前に提出してください。提出済みの申請は現行基準で審査されます。そのうえで40点前後の候補者はCOMPASSを再計算します。下限が動けばC1も動くためです。
| 実施事項 | 理由 | 時期 |
|---|---|---|
| EPとS Passの保持者を満了日とともに一覧化する | 2028年1月1日以降に満了するパスは新基準で更新され、それ以前の満了分は影響を受けないため | 今四半期 |
| 適用下限との差がおおむねS$1,000以内の従業員に印をつける | この層の更新には書類ではなく昇給が必要になるため | 今四半期 |
| 差額を2027年の給与改定に織り込む | 一般業種のEPは下限が+S$400、上限が+S$800、金融業種はそれぞれ+S$400と+S$900になるため | 2027年度計画の確定前 |
| 実需のある新規採用を2027年1月1日より前に前倒しする | 同日より前に提出した申請は現行基準で審査されるため | 2026年10〜12月 |
| 合格ライン付近の候補者についてCOMPASSを再計算する | 下限の引き上げで現行水準のオファーはC1が下がり、C5とC6の加点で挽回できる場合があるため | 各申請の提出前 |
| 現地従業員をS$1,800の基準で数え直す | 実際の雇用枠が人事システム上の数字より少なくなっている可能性があるため | いますぐ。基準はすでに施行済み |
| S Pass想定の職務が実際にはEP相当でないかを確認する | S Passは雇用枠と賦課金の制約を受け、EPは枠の制約はないものの給与下限が高くCOMPASSの対象となるため | 職務設計の段階 |
見落とされやすい論点を1つ挙げます。2027年の更新基準を超えるための昇給は恒久的なコストである一方、賦課金や雇用枠の水準は今後も変わり得ます。この2つは切り分けて試算してください。あわせて、シンガポールには月次の所得税源泉徴収がありません。雇用主の税務上の義務は、毎年3月1日期限のIR8A/AIS(自動記入制度)の提出と、非国民の従業員が退職する際のIR21税務クリアランスです。後者では退職や出国の少なくとも1か月前にIRAS(内国歳入庁)へ届け出て、クリアランス完了まで最終給与を留保します。シンガポールの税務対応で負荷がかかるのは毎月の給与計算ではなく、退職時の手続きです。
シンガポールに法人がまだない場合。就労パスはシンガポールで登記された雇用主のスポンサーが前提で、COMPASSが見るのはそのスポンサー企業の人員構成です。3名規模の現地法人ではC3とC4の点数が伸びず、候補者の実力だけでは補えません。Anidayのシンガポール法人 Aniday Pte. Ltd. が法律上の雇用主となり、パスのスポンサーと給与計算代行までを引き受けます。詳しくはシンガポールの雇用代行(EOR)をご覧ください。すでに現地法人があり、体制を維持したまま実務だけを委託したい場合はシンガポールのPEOが選択肢になります。2027年の基準に向けた棚卸しは、無料相談を予約する形でも承ります。
参照元
シンガポールの雇用パス・S Pass に関するよくあるご質問
雇用パスの最低給与は現在いくらですか。
一般業種の最年少層で月額S$5,600、年齢とともに上がり45歳以上ではS$10,700です。金融業種はS$6,200からS$11,800となります。あわせてCOMPASSで40点が必要です。
新基準はいつから適用されますか。
新規申請は2027年1月1日からです。更新で影響を受けるのは2028年1月1日以降に満了するパスに限られるため、判断材料は提出日ではなく各パスの満了日になります。
2027年のEPの下限はいくらですか。
入口の年齢層で一般業種がS$6,000、金融業種がS$6,600です。年齢に応じた上限は40代半ばでそれぞれS$11,500とS$12,700になります。
COMPASSの項目はいくつありますか。
6つです。基礎4項目はC1給与、C2学歴、C3国籍の多様性、C4現地雇用への貢献で、各20点・10点・0点です。加点2項目はC5スキル加点(+20、候補者の国籍が貴社のPMETの3分の1以上を占める場合は+10)とC6戦略的経済分野の加点(+10)で、合格ラインは40点です。
S Passの賦課金はいくらですか。
2025年9月1日から全業種・全区分で1名あたり月額S$650の一律で、日割りはS$21.37です。Tier 1/Tier 2の2段階は廃止されているため、2段階の表を掲載している情報は古い内容です。
現地従業員給与基準はもう引き上げられましたか。
はい。2026年7月1日から月額S$1,800、パートタイムは時給S$10.50です。月額S$1,800以上の現地従業員は雇用枠で1名、S$900以上S$1,800未満は0.5名として数えられます。
EPやS Passの保持者にCPFは必要ですか。
必要ありません。CPF(中央積立基金)の対象は国民と永住権保持者に限られ、雇用主がパス保持者のために拠出することはできません。技能開発賦課金(SDL)は外国人を含む全従業員が対象で、月額総賃金の0.25%、1人あたり月額最低S$2・最高S$11.25です。
法人がなくてもスポンサーになれますか。
なれません。スポンサーはシンガポールで登記された雇用主に限られ、COMPASSはその雇用主の現地人員構成を評価します。雇用代行(EOR)を使えば、Anidayの場合は Aniday Pte. Ltd. がパスのスポンサーとなり、雇用契約の締結と給与計算代行まで引き受けます。